いまいちど、出生率について考えてみませんか?(6)

今回、日本の出生率問題についてシリーズで記載しています。前回は、出生率問題の背景に経済成長の問題があること、経済成長の問題への解決には当面は最新テクノロジーの導入が必要なことを記事にしました。今回は、出生率増加に向けて、日本が取り得る現実的な選択とは何かを見てみます。

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経済成長

これまでの記事でも述べた通り、経済成長の3要素「人口増加」「企業の設備投資」「最新テクノロジーの導入」のうち「最新テクノロジーの導入」が、日本が取れる現実的な選択です。そのことは国も理解していて、内閣府の年次経済財政報告(令和元年)でも、イノベーションの重要性が触れられており、国としても力を入れる姿勢は示されています。

「Society 5.0」がもたらす経済効果
近年の情報通信ネットワークやIoT、AI、ロボットなど新技術の発展等により、第4次産業革命とも呼ばれる大きなイノベーションの波が生まれている。こうした第4次産業革命イノベーションを、あらゆる産業や日々の生活に取り入れることにより、様々な社会課題を解決するのがSociety 5.025であり、経済的な側面においても、Society 5.0の実現により、車の自動運転など新たな財・サービスの創出による需要の拡大や、IoT、AI、ロボット等の生産現場やオフィスへの導入による生産性の向上等の効果が期待される。本節では、Society 5.0の経済効果について確認する。

https://www5.cao.go.jp/j-j/wp/wp-je19/h01-04.html

「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」について

Society 5.0 やSDGsの実現という社会変革に向けたイノベーションの促進、先端技術や人材への投資の大胆な喚起により我が国の生産性を向上させるとともに、インバウンドの継続的な取り込みや、国内消費の切れ目のない下支えなどにより、経済の活力を維持・向上していかなければならない。

https://www5.cao.go.jp/keizai1/keizaitaisaku/2019/20191205_taisaku.pdf

一方、実際の企業でのテクノロジー導入の状況を見てみると、他国と比べて遅れているようです。オラクル株式会社の2019年の調査では、日本企業でAIの導入が遅れていることが指摘されており、日本企業の旧体制からの脱却が求められています。

調査の結果では、18年に行われた同様の調査と比較して、何らかの形で「職場でAIを利用している」と回答した従業員の割合がおよそ1.5倍に増えた。・・・日本企業に顕著だった点には、AIの導入率が最も低かったことが挙がった。・・・「日本では、事業部門でのAI活用は進みつつあるが、バックオフィスに導入する意識が低い」と指摘している。・・・AIの導入が進まないのが単にテクノロジーの問題ではなく、日本企業の構造的な問題も絡んでいることが浮き彫りになった。一部の大手企業では、労組と協調して年功序列の段階的な変更を実行しているケースが出始めてきたが、世界基準のAI導入にはまだまだ時間がかかりそうだ。

https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1911/20/news051_2.html

家族政策

日本と国土面積がほぼ同じであるドイツですが、2016年に出生率増加が大きなニュースとなりました。その要因としては「移民の受け入れ」「家族政策」「経済の明るい見通し」の3つが挙げられました。しかし、日本経済の見通しは良くないので、外国人が経済の見通しが悪い国に来るのかというと疑問があります。そのため、「家族政策」が出生率増加のために取るべき選択になります。 日本とドイツの子育て支援策の違いを見てみます。

  • 日本では、「学校無料化」「保育所「収入保障」
  • ドイツでは「学校無料化」「保育所「収入保障」

 以上に挙げている通り、学校無料化や保育所不足対策を推進している点は両国とも大きな違いはないと考えられます。しかし、収入保障という点で大きく異なります。ドイツは育児休業中の収入保障(元の収入の67%、期間は最大12カ月まで)です。一方、日本は保障金額(最初の6カ月は元の収入の67%、それ以降は50%、期間は最大2歳まで)となっています。日本の方が期間が長いので良いのではと思うかもしれませんが、ドイツでは政府による育児休業後の復帰を促す政策(復帰権というもの)があるので、安心して育児休業を選択でき、その結果、ドイツでは2014年の男性の育児休業取得率は34.2%(参照: https://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2016/08/germany_01.html)という高い値となって表れています。日本でも「育児・介護休業法」という法律で、育児休業取得による不利益を禁止していますが、うまく機能していない問題が言われており(参照: https://news.yahoo.co.jp/byline/konnoharuki/20200202-00161348/)、男性育児休業取得率は6.16%(2018年)と低い結果となっています。

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まとめ 

以上をまとめると、日本が取るべき選択としては、「最新テクノロジーの導入で生じる労働生産性向上による経済成長」です。その結果生じる経済成長から、国民所得の増加が起きて、初めて出生率増加が達成できます。

また合わせて、育児休業中の収入保障(職場復帰を含めた)も今よりも良くし、安心して子育てができる環境を整備する必要もあります。子供を持つ世帯への保障であるので、不公平感が生じるかもしれませんが、この保障の真の目的が生活保障ではなく、経済政策である事を理解してもらう事が重要です。

「テクノロジー促進による経済成長」と「収入保障」の2つの柱が出生率増加のためには必要であるという事が、ドイツの成功事例から分かりました。

 

これまで、6回に渡り出生率を考えてきましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。これらの記事に関してコメントを頂ければ幸いです。

 

参考:

 

興味がありましたら、過去の記事もご覧ください。

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