いまいちど、出生率について考えてみませんか?(5)

前回は、ドイツの出生率増加とその要因について記事にしました。ドイツの出生率増加の3つの要因「移民」「家族政策」「好調経済」のいずれも、現在の日本には当てはめることができませんでした。その結果が出生率低下となって表れています。今回は、そもそも、なぜ出生率が低下すると問題になるのか?をもう一度考えてみます。
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出生率低下(少子化)で生じる問題は、「経済的影響」と「社会的影響」の2つに分けられます。

  • 経済的影響は、15~64歳の生産年齢人口の減少によって、労働力供給の減少を生じることです。その結果、年金などの社会保障への現役世代の負担が増大するし、現役世代の所得が減少が生じます。
  • 社会的影響は、独身や子どものない世帯が増加し、社会の基礎的単位である家族形態が大きく変化することです。特に、独身高齢者が増加し、介護やその他の社会的扶養の必要性を高めることにもなります。地域によっては過疎化の進行によって、公的サービスの提供が困難になる可能性も懸念されています。

経済的影響も社会的影響のどちらも社会保障の負担増加が問題の根幹となっています。厚生労働省が発表している社会保障給付費の推移では急激な増加を示しており、2019年で約123兆円(国民所得の約50%を占める)となっています。社会保障に係るお金はこのまま増加が予想されており、少ない現役世代が支えていくという状況になります。

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参照: 厚生労働省 (https://www.mhlw.go.jp/content/000582876.pdf)

増加が予想される社会保障を対応する方法として「出生率増加 → 人口増加 → 生産年齢人口増加 → 1人ひとりの負担を軽減しつつ社会保障の維持」というフローが考えられている、ということが出生率低下問題の背景にあるということです。別の観点で考えれば、莫大な社会保障を支える別の方法が見つかれば、出生率低下は大きな問題ではないとも考えられます。つまり、たとえ人口減少しても、経済成長によって一人ひとりの所得が増加すれば良いわけです。

このシリーズの第1回目の記事で述べたように、経済成長の3つの要素は「人口増加」「設備投資」「テクノロジーの進化」があります。前述したように、ドイツを参考にした出生率増加の要因を日本に当てはめることができないので、人口増加による経済成長は現在の日本に対しては現実的ではありません。また、設備投資は企業が関わる部分で、将来経済の見通しが良くなければ増加するはずがありません。残るのはテクノロジーの進化だけです。人工知能、ロボティクス化最近話題になっていますが、最新のテクノロジーを導入することで、少ない生産年齢人口でも高い労働生産性を実現できれば、経済成長が可能であるということです。今まで10人で10000円分の生産していた仕事を、テクノロジーの力を用いて2人で行える様にするという考えです。

人口増加の実現として「移民を増やす」というアイデアもありますが、将来経済の見通しが悪い日本に本当に外国人が来るでしょうか?ドイツに移民が多く来た理由は、ドイツに行けば良い暮らしができるという見通しがあったからです。残念ながら、現在の日本はそのような明るい国とは見られていないのが現状です。また、言語の問題もあります。日本語は日本国内でしか通用しない言語なので、英語公用語の国に行った方が様々な展望が描けると多くの外国人は考えるはずです(日本の経済が好調ならば別ですが)。従って、たとえ移民政策を緩和しても、期待通りに外国人が来てくれるのかは疑問が残ります。

現状の日本で経済成長対策を考えるのであれば、まずは最新テクノロジーの導入による労働生産性の向上というのが現実的です。

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Photo from https://pixabay.com/photos/puzzle-match-missing-hole-blank-693865/#content

それでは、出生率低下はそのままでもいいのか?と言うとそうではありません。しかし、現状の日本では、経済成長の問題を出生率によって解決するのは、無理があるということです。ドイツの出生率増加の要因の1つに「好調な経済」があったように出生率と経済は関連性があるため、将来経済の見通しが悪い状態で出生率増加させるのは難しいと考えるのが自然です。

今回は、出生率低下問題の背景が経済成長の問題であることを記載しました。次回の記事では、日本が取ることができる出生率増加までの流れについて記載したいと思います。次回も読んで頂ければ嬉しいです。それでは、また!! 

 

参考

経済財政運営と改革の基本方針 2019 について

https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2019/2019_basicpolicies_ja.pdf

日本の少子化問題とは?原因や将来への影響を知り対策を考えよう

https://gooddo.jp/magazine/health/low_birthrate_and_aging/low_birthrate/7381/

 

 興味がありましたら、過去の記事もご覧ください。

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