いまいちど、出生率について考えてみませんか?(4)

日本の出生率問題を取り上げています。前回は、日本と世界の状況を比較して、ドイツが出生率改善の参考になる可能性があることを記事にしました。今回は、ドイツの出生率増加の要因について見てみます。 

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Photo by Christian Lue on Unsplash

ご存じかもしれませんが、ドイツの出生率増加は、近年大きなニュースとなっていました。他国と同様に、ドイツは長い間出生率の減少が問題となっていましたが、2016年に出生率1.59と突如増加し、その後5年間継続した増加を示しました。その理由としては、大きく3つの要因があるようです。 

1. 移民の高い出生率

1番目の理由として挙げられているのは、「移民の高い出生率」です。2016年には、非ドイツ人女性の出生率が前年比でなんと25%増加を示しました。伝統的に多くの子供をもつ文化圏から移民が多かったためと考えられています。

2. 家族政策

2番目の理由が「家族政策」です。人口減少対策として、育児休暇に対する手厚い保障を実施しました。母親・父親を問わず給与の2/3が最初の1年間に、両親2人が同時に育休を取ると、支給期間が2ヶ月間支給延長といった政策です。さらに、託児所不足解消にも力注いだようです。男女問わずの政策の甲斐もあり、2006年に3.5%だった男性の育児休業取得率が、2015年に36%まで上昇だけでなく、ドイツ人女性の30~37歳での出生率も増加しました。

3. 好調な経済

3番目の要因としては、ドイツ経済が好調であったという点です。2015年には、EU全体の経常黒字のうちおよそ8割をドイツが稼ぎ出し、2016年には、中国を抜いてドイツは世界最大の経常黒字国となりました。ただ、2019年では、ブレグジッドや貿易摩擦の影響から、経済にも陰りが出始めているようです。

ドイツの出生率上昇、1973年以来の高水準 BB News (2018/3/29):

https://www.afpbb.com/articles/-/3169158?cx_amp=all&act=all

ドイツでベビーブーム、出生率が43年ぶりの高水準に NewSphere (2018/4/4): 

https://newsphere.jp/national/20180404-3/

ベビーブームに沸くドイツ 日経新聞 (2018/4/5):

https://r.nikkei.com/article/DGXMZO29044440V00C18A4FF2000

「小さな奇跡」日経BizGate (2019/5/21):

https://bizgate.nikkei.co.jp/article/DGXMZO4495934017052019000000?page=2

なぜドイツは男性の育休が急増した?社会の空気を変えたものの正体

Business Insider (2020/1/27)

https://www.businessinsider.jp/post-206372

かつては“欧州の病人”、今や“一人勝ち” その国は? NHK News Web (2019/9/2)

https://www3.nhk.or.jp/news/special/german-election-2017/german-strength/

10年ぶりのドイツ景気後退と緊縮主義の終わり 東洋経済ONLINE (2019/8/30)

https://toyokeizai.net/articles/-/299901

以上の3つの要因によって、出生率増加となったドイツではありますが、2016年の出生率(1.59)でも、2を下回ったままです。そのため、人口減少に歯止めができているとは言えません。また、経済の陰りが見え始めているので、このまま出生率増加が継続されるかには疑問があります。しかし、これら3つの要因は、日本も大いに参考できる部分ではあります。次に、これら3つの要因から日本の状況を見てみます。

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1番目の要因「移民」は、日本では限定された人のみが移民の対象となるので、当てははめることができません。また、3番目の「好調な経済」ですが、経済が好調である言われてきた点は日本も同じですが、好調な経済が国民個人に実感としては伝わってはいません。さらに、直近では消費税増加やコロナウイルスによって経済が大きく影響を受けることが予想されているため、これも当てはまらないと考えられます。

そうなると、2番目の「家族政策」しかない訳です。日本の家族政策(子育て支援)は、2016年に「ニッポン一億総活躍プラン」の閣議決定がされ「出生率の目標値を1.8」の実現に向けて、若者の雇用・安定待遇改善・保育サービスの充実・働き方改革推進・希望の教育を受けることを妨げる制約の克服といった様々な政策を掲られました。しかしながら、現実は「女性の育休取得率が83.2%なのに対し、男性は5.14%と極めて低い。」や「約20000人の待機児童がいる。」となっていることから分かる通り、出生率減少(2017年には1.43)しており、家族政策の効果が出ているとは言えません。

ドイツで出生率増加の3つの要因のいずれも日本には当てはまっていないという訳です。当然、出生率低下が収まるはずがありません。

それでは一体日本がどのような対応策を講じていけばいいのでしょうか?次回はその対応策について記事にします。

次回も読んで頂ければ嬉しいです。それでは、また!! 

 

興味がありましたら、今回のシリーズの過去の記事もご覧ください。

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