デジタルデバイスに踊らされてはいけない

今週のお題「ゲーム」

 

コロナウイルス騒動で何かと話題の世界保健機関(WHO)ですが、2019年5月25日にWHOが『オンラインゲームやテレビゲームに没頭し生活や健康に支障をきたす状態を「ゲーム障害」(ゲーム依存症)という精神疾患として「改訂版国際疾病分類(ICD-11)」で位置付けることを公表した』というニュースが話題になりました。

次の条件に全てに当てはまる場合にゲーム依存症にあたります。

  • オンラインゲームやテレビゲームをしたい衝動が抑えられなくなり、日常生活より優勢してしまう
  • 健康を害するなどの問題が起きてもゲームを続けたり、一層エスカレートしたりする
  • 家族や社会、学業、仕事に著しい問題が出ている
  • これらが少なくとも12カ月以上続く(重症の場合は12カ月未満でも該当する)

 

一方、国内に目を向けると、2020年3月18日に香川県議会で「ネット・ゲーム依存症対策条例」が正式に可決されたことがメディアに大きく取り上げられました。

香川県議会が2020年1月10日に提出、3月18日に可決・成立、4月1日に施行された、日本初のゲーム依存症対策に特化した条例であり、インターネットとコンピュータゲームの利用時間を規制する条例である。マスメディアからは「ゲーム条例」または「ゲーム規制(制限)条例」と呼ばれている。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A6%99%E5%B7%9D%E7%9C%8C%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0%E4%BE%9D%E5%AD%98%E7%97%87%E5%AF%BE%E7%AD%96%E6%9D%A1%E4%BE%8B

 

条例可決に至るまでの経緯やその後のパブコメで生じた問題が報じられていますが、今回は、そのような問題点ではなく、「ネット・ゲーム依存症対策条例」という条例そのものについて第三者として客観的に捉えてみます。

 

条例の目的と利用制限

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Photo by Ugur Akdemir on Unsplash

まずは、ネット・ゲーム依存症対策条例の目的と利用制限を見てみます。この条例には、目的として「子供たち(18歳未満)の健全な成長」、ゲームやスマートフォンの利用時間制限として「1日の利用が最大60分(休日は最大90分)で夜9時まで(高校生以上は夜10時まで)」があります。ちなみに、この条例には罰則規定はないので、守らない場合でも特にデメリットはありません。

目的 (第1条)

この条例は、ネット・ゲーム依存症対策の推進について、基本理念を定め、及び県、 学校等、保護者等の責務等を明らかにするとともに、ネット・ゲーム依存症対策に関する施 策の基本となる事項を定めることにより、ネット・ゲーム依存症対策を総合的かつ計画的に推進し、もって次代を担う子どもたちの健やかな成長と、県民が健全に暮らせる社会の実現 に寄与することを目的とする。

子どものスマートフォン使用等の制限(第 18 条) の一部

保護者は、前項の場合においては、子どもが睡眠時間を確保し、規則正しい生活習慣を 身に付けられるよう、子どものネット・ゲーム依存症につながるようなコンピュータゲー ムの利用に当たっては、1日当たりの利用時間が 60 分まで(学校等の休業日にあっては、 90 分まで)の時間を上限とすること及びスマートフォン等の使用に当たっては、義務教育 修了前の子どもについては午後9時までに、それ以外の子どもについては午後 10 時までに 使用をやめることを基準とするとともに、前項のルールを遵守させるよう努めなければな らない。

参照: https://www.pref.kagawa.lg.jp/content/etc/web/upfiles/wr2f3g200122132241_f02.pdf

 

条例可決前にパブリックコメント募集(香川県の人対象)があり、賛成・反対の様々な意見が寄せられました。パブリックコメントの内容を受けて発出された「ご意見等に対する考え方」を簡単にまとめると、次の2つです。

  • 若者が陥りやすい「ゲーム障害」の対策として、次代を担う子どもたちの健やかな成長のためというのが、条例の目的となっている。
  • 利用時間制限は「国立病院機構久里浜医療センターによる全国調査結果」と「香川県学習状況調査」の調査結果に基づいている。

「ご意見等に対する考え方」の抜粋

https://www.pref.kagawa.lg.jp/content/etc/pubcom/upfiles/pty50x200316162057_f04.pdf

 

条例の目的は、ゲーム障害対策というちゃんととしたものですし、メディアで話題になった利用制限についても、香川県と外部機関の調査という2つの根拠があり、しっかりした内容の条例であると言えます。つまり、条例の内容をみると、「ゲーム依存(障害)=悪」という捉え方であり、「ゲーム・スマホ=悪」にはしていない点が重要です。

 

条例への批判

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Photo by Lou Levit on Unsplash

メディアで大きく話題で取り上げられた際に様々な批判がありました。その批判の多くは

  • 地方自治体が子供の自由を制限する
  • ②子供のテクノロジーの利用野機会を奪う
  • ③高齢者による最先端技術を理解しない

に大別できます。しかし、実は、批判①②③は、条例の目的(ゲーム依存症対策)とは別の観点であり、条例自体の批判とはなっていません。

批判①②③のそれらの本当の意味を考えてみると次のようになります。

  • ①⇒自由を尊重する民主主義からの逸脱に対する批判
  • ②⇒最新知識に対する機会損失に対する批判
  • ③⇒世代間ギャップに伴う批判

上から分かる通り、個人(子供や若者)の自由意思への介入や機会損失に対する批判ということですが、条例自体の主旨は「若者の健全な成長」なので、自由意思への介入や機会損失をしたいわけではありません。

 

「それでも、この条例が、結局は自由意思への介入や機会損失につながるのでは?」という意見があるのはわかりますが、「若者の健全な成長」も重要な視点です。

競馬、競輪、パチンコやスロットに代表される公営ギャンブルで生じるギャンブル依存(障害)が社会問題となっていることを考えると、ギャンブルと多くの類似点をもつゲームへの依存対策を考えることは、ちゃんとした大義はあります。

 

条例の目的や、調査結果に基づく利用制限の設定を考えると、そこまで批判するべき条例ではないと考えられます。

 

まとめ

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Photo by Aaron Burden on Unsplash

ゲームもスマホも普通の状態では、ストレス解消・最新技術及び知識の習得という多くのメリットがあります。一方、自分で自分のコントロールできなくなるゲーム依存症という疾患につながるデメリットもあります。ゲームもスマホよるメリットを理解しつつ、デメリットへの対策は考えておくことに重要な視点となります。

 

重要なことは、「デジタルデバイスにコントロールされる」ではなく「デジタルデバイスを使いこなす」というです。

 

この条例に強制力や拘束力はありませんが、次世代を担う子供の将来の活躍のためにも、一人ひとりがこの条例、ゲームやスマホとの関わり方を考え直してみる良い機会と捉えてみるのはいかがでしょうか。